この時期になると、嫌でも思い出すのは祖父母のこと。祖母の左手から首にかけての大きな火傷のあと、戦争中に負った傷あと。あの頃はまだ子供で、ただただ「ふう~ん」と聞き流していた戦中、戦後の それは想像してもしきれない程の切ない体験談。私が誰かに語ってもそれはきっと、ただの昔話になってしまう。
けれど、それでもせめて子供には聞かせておきたいと思う。祖母のこと、祖父のこと。私がいつも「素敵な夫婦だなぁ」と思ってみていた仲の良い二人のこと。あれはきっと、大変な、命がけだった時を過ごしてしまった二人の強い絆のたまものだったに違いない。どこに行くのにも二人声を掛け合っていた。「~へ行こうよ」「はいはい」、そしてどこへ行くのにも手をつないでいた。 祖父の温かく優しい祖母を労わる声、差し伸べる手。
私の祖父母だけが特別な訳ではなく、沢山ある経験談のうちの一つに過ぎない事柄だけど、思い出すとそれだけでも涙があふれ、苦しくなる。